2007年10月8日月曜日

【出版裏だより vol.1】武蔵(東京他)の一の宮

このシリーズ、『全国「一の宮」徹底ガイド』にのせられなかった裏話、写真などを紹介します。





さて栄えある第1回は武蔵の一の宮(本書85ページ)にまつわる話です。

この武蔵野一の宮として紹介したのが、東京・多摩市にある小野神社。




本書で紹介したように、かなりマニアックな神社なんですね。
今でも「一ノ宮」という地名があちこちにみられるので、地元の方には有名ですが、なかなか知られていないのが実情です。


それもそのハズ、ある意味では他の神社に食われちゃってるんですね。
その神社こそ、隣町にある府中市の大国魂神社(写真。本日撮影しました)です。


国内の由緒ある神様を一カ所にあつめたのが総社(そうじゃ)。
大国魂神社はその総社として非常に力を持ったのです。



大国魂神社は、古くは六所宮(ろくしょのみや)とよばれ、一の宮から六の宮までの6つの神社をまつっていました。
現在も6つの神社の神輿(みこし)が本殿にまつられています。


古文献によると、武蔵国には、一の宮から六の宮までの6つの神社がありました。

 一の宮小野神社

 二の宮小河神社(現在の二宮神社、東京都あきるの市)

 三の宮氷川神社(埼玉県さいたま市)

 四の宮秩父神社(埼玉県秩父市)

 五の宮金讃(かなさな)神社(埼玉県児玉郡)

 六の宮杉山神社(神奈川県横浜市)

です。
これらの神社の神様が総社である大国魂神社に集められたのです。


大国魂神社では毎年5月5日にくらやみ祭(国府祭)が行われ、神輿6基が街を練り歩きます。
6つの神社の神が集結する様子をあらわしたものだそうです。


くらやみ祭りは司馬遼太郎の小説『燃えよ剣』の冒頭で詳細に描かれています。
新撰組の土方歳三(ひじかたとしぞう)が祭りの夜に女をたぶらかす場面です。
この描写にも現れているように、くらやみ祭りは歌垣(うたがき)の性格を帯びていたともいわれています。

歌垣とは、現代でいえば合コン。
男女が集まり飲食し、相手の気を引くために歌をうたう。
意気投合すれば「人妻に吾も交はらむ 吾が妻に他も言問へ」(万葉集)ともなるのです。


くらやみ祭の盛大さをみれば総社大国魂神社がいかに大きな神社かがよくわかります。
一方の一の宮小野神社、総社である大国魂神社が力をどんどんつけるのに比例して、役所のトップである国司が参拝にも来なくなる状況が続きます。
結果として、一の宮とて地位が相対的に低下してしまうのも無理はありません。


そのためでしょう、今では江戸時代になって武蔵の一の宮となった氷川神社のほうが有名なんですね。


なかなかマニアックだけど味わいのある歴史を持つ小野神社。ぜひ訪れて、その歴史のいったんにふれてみて下さい!


【アクセス】
京王線・聖蹟桜ヶ丘より徒歩10分。
電話042-581-3905

詳しくは『全国「一の宮」徹底ガイド』をご覧下さい!

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